『聖☆高校生』読了
ついさっきまで(29日の朝四時ごろまで)読んでましたが、ついに読了。
なかなかまとめられないので、中途半端でもうpします。
あふれ出る思い。
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- 出版社/メーカー: 少年画報社
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- 作者: 小池田マヤ
- 出版社/メーカー: 少年画報社
- 発売日: 2010/12/08
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ひとまずネタバレなしで書きます。
いやはや、すごいですねコレ。最初のころは「おいおい、大丈夫かよコレ……」って冷や汗と酸っぱい唾液と胃痛をこらえながら読んでましたけど、こうきてああきてギューンときてピタッと着地しちゃうんですよ、この作品は!*1
「伏線は『張る』ものじゃなくて『張ってる』もの」? とんでもないことでございますよ、小池田先生! 漫然と描いてできる代物ではありませんよ! 完結するのに12年もかかったのはご愛嬌。
読み始める前はすぐ読めそうなんだけど、読んでみると結構時間がかかる。結構ページあるしね。そんでもって時間が経つのが早い(主観)という4コママンガ。
正直評価しかねる(内容が悪いという意味ではなく、うまく言えないという意味で)部分もありますが、「まあ、異性との交際ですって! 不潔!」っていうくらいでなければ、誰にでも勧められる内容の物語であると断言できます。しかし、「誰に勧められるかを見極めること」がこの作品では一番肝要かもしれませんね……。重いし。ハードプレイもないわけではないし。ムフフな展開はむしろたくさんありますけど、エロ目的で買う人がいたら途中で目も当てられない事態になりますよ。メンタルが弱い人や、落ち込んでる人に読ませるのは避けた方が良いです。クトゥルフでいう『黄衣の王』的な扱いを推奨します(嘘)*2
以下ネタバレありです。未読の方は、どうか最初から最後まで『聖☆高校生』を読んで下さい(涙) 俺との約束だよ!
ついつい地が出て俺って言ったり上から目線になってしまいました。キッショいわ〜。*3まあ今更か。続きます。
『聖☆高校生』の物語は、神保聖の成長の
この文では、最初〜聖失踪までを前半、聖と歌舞伎町がメインステージになっている部分を中盤、聖が歌舞伎町を離れて自宅に戻ってから最後までを後半としたいと思います。
最初は聖の高校入学から始まりますが、「高校や高校生の持つ名状しがたい雰囲気を紙面にここまで落としこめるものなのか」と戦慄しました。「どうして男子(正確には高校生時の自分)の目線や思考が分かるんだ!?」とも思いましたが、これくらいのことは高校生くらいの女性でもわかってしまうものなんですかね。だとしたら私のバラ色の高校生活は始まる前に終わってました(笑) あと、守に振られた時の鮎子の思考が怖い怖い。女の子ってこんなに自己中心的?なんですか? これはひどい。私は割と言いたいことを言う方ですが、失恋した瞬間とはいえ、こんなシビアことを他人に対して考えることは今までの経験上できそうにないです。読んでて「自分も聖と同じ行動とりそうだな……」とか、「女の子はここまで考えるのか……」とか、ぐさぐさ心をえぐられました。これが文字通りの「青春の蹉跌」か。
前半の大きな山場は、聖と鮎子の一悶着・「自分が何かしてやったという実感」が欲しくて聖が起こした行動とその結果・聖の失踪ですが、私はこの一連の流れが全体を通して一番キツかったですね。この「自分が何かしてやったという実感」って『聖☆高校生』全体を表すキーワードのひとつじゃないかと思います。要は「自己満足」ですかね。あとは「偽善者」。このエゴを認めることができるようになる(なりつつある)かどうかで、『聖☆高校生』の物語は分岐点を迎えるのではないでしょうか。
中盤の「歌舞伎町編」*4からは、私は急速に感情移入できなくなったというか、あるがままの物語を受け止めにくくなりました。自分には未知の世界過ぎたことが原因かな、と考えています。歌舞伎町は行ったことがないし、クラブや風俗もよく知りませんが、実際こんな感じなんですかね? 自分の経験を伴わない知識では全く判定できないです。実感の湧きにくいものは使いにくい。ただ、嘘っぽくはないと感じました。「歌舞伎町がこんな感じでもいいかな?」って思って読んでました。あまりのめり込めなかったがゆえに、一番冷静に読めた部分かもしれません。前半ほどトラウマになるイベントもなく、『聖☆高校生』全体を通じて一番明るく楽しいシーンであるように感じました。最後の方では、ジュンさん*5に聖が踏み込んでまた同じことを繰り返しますが、鮎子と同じ結末にならなかったのは、多分相手がジュンさんだったからなんだろうなあ。ジュンさん!俺だ!結婚してくれ!!
失礼、取り乱してしまいました。後半ですが、ここからが本当の『聖☆高校生』だ! 聖が高校に戻った直後の話では、下衆さにおいて聖が前半の鮎子と重なって見えました。いや、しょうがないかもしれないけどね、こういうのって。やられたら(たとえそれが関係がない人でも)他人にやり返しちゃうもんなんでしょうか。リアルっちゃリアルですけど、前半の鮎子ともども非常に不快でしたね。自分は潔癖症気味かもしれない。
ちょくちょく挟まれる過去編では、謎めいた美園先生たちの因縁が少しずつ明らかになっていくんですが、これがまた力が入っている。そして重い。どうしようもなく重い。引き込まれるなぁ。どうにも私にはちぐはぐに見えた成俊やチカさん*6の行動も、最初から最後まで読むと一本筋が通っているんですね。みんな自分の軸を持って大学生やってんだよな〜。反省。余談ですが、小池田先生は大学生も描けるんですね(笑)
9〜11巻の聖は、何かと怪我しまくりでいいとこなしだけど、最終的にはマジ聖Δ展開。ジュンの問題も美園先生拉致未遂も「解決」するし、美園先生たちが過去の楔から解放されて今を生きるためのお手伝いもしちゃう。いつのまにか(?)他人の懐に深く入っちゃってる聖。ぐるぐる回り道しつつも、ひたむきに生きてきたからこそなのかな。あの聖がここまで……(泣) 涙なしには最後のシーンは見れません。大団円。あと、自分はやっぱジュンさんが好きです。
前述の通り、私が考える『聖☆高校生』のキーワードは「自己満足」と「偽善者」ですね。これらを持っている自分、醜い自分をいかに認め、そのエゴを自分の人格に統合していくかという成長が描かれた物語であったように思います。もう少しありそうなんですけど、もやもやしているのでひとまずこの二つで。
- 少女まんがっぽいノリ?
私は少女マンガを読んだことがないのですが、少女マンガを知らない自分から見て、そういうノリも含まれていたと感じました。あ、『のだめ』は2、3ページ読ませてもらったような気が。でも、少女マンガっぽいノリってなんなんでしょう? 絵柄だけでそう感じたのかな? 触れたことがない人の憶測なので、書いててもさっぱり言語化できませんね〜。 『のだめ』貸してもらって読もうかしら。
- 「誰がいつ死んでもおかしくない」
龍人が成俊にこんな感じのセリフを言っていたと思いますが、よい言葉ですね。龍人の人となりを表していると思います。忘れがちなことを思い出させてもらったので、感銘を受けました。当たり前のことほど、日常だと霞んじゃったり、近すぎてよく見えなくなってしまったり、意図的に無視してしまっていたり。これくらい人生割切らないと、私は毎日頑張れないかもしれません。当たり前のことですが、読んだ人にしかこの言葉の意味は伝わらないでしょう。
キャリアであった成俊の辛苦は想像することすら難しいですね。*7もちろん成俊の周りの人も煩悶するわけですが。母子感染というのも、自分の意識の埒外だったので恥じました。最近、ドイツでAIDSが完治したっていうニュースがありましたが、とても幸運なレアケースらしく、今のところ投薬で進行を遅らせるしかできないようですね。
- 4コママンガであるということと、『聖☆高校生』のテーマ
マンガを読んでいる人としては、これだけのストーリーを4コママンガというスタイルで描き切ったということにも触れておきたいと思います。4コママンガでサザエさん世界ではない(キャラが作中時間の経過と共に変化していく)連続したストーリーを紡ぐのは、そんなに珍しいことではないでしょう。私の世代(1980年代生まれ)では『あずまんが大王』や『らき☆すた』がよく読まれているのではないでしょうか。『らき☆すた』は少年エースにちょこっと掲載されたのを見かけた程度で、原作を読んだことはほぼありませんが。
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しかし、この二つと『聖☆高校生』ではシリアスさが違います。いずれにもコミカルな表現はありますが、『あずまんが大王』と『らき☆すた』にはやれ死ぬだの、やれフェ○がどうのといった表現はありません。これは、どちらの作品もそういったリアリスティックなことを描くことをテーマとしていない、ジャンルが違うからでしょう。私が『聖☆高校生』のあとがきやコラムをざっと読んだ限りでは、小池田先生は「こういうことが書きたかった」とはおっしゃっていましたが、作品のテーマについては明言されていなかった*8と思います。先生の他の作品も読めば答えが見つかるのかな。
また、マンガ表現的に言えば『聖☆高校生』のキャラは伊藤剛さんのいう「キャラ」ではなく「キャラクター」であるということも気になりました。
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私は4コママンガというものは基本的に「キャラ」の方が描かれるものと了解していました。「キャラ」というのは「止まっている」ものです。あくまで記号として機能します。ミッキーやキティちゃんが当てはまるそうです。マスコットと言い換えるとわかりやすいかもしれません。伊藤剛さんの言葉を私がまとめると、
「キャラ」とは『多くの場合、比較的に簡単な線画を基本とした図像で描かれ、固有名を名指されることによって(あるいは、それを期待させることによって)、「人格・のようなもの」としての存在感を感じさせるもの』であり、「キャラクター」とは、『「キャラ」の存在感を基盤として、「人格」を持った「身体」の表象として読むことができ、テキストの背後にその「人生」や「生活」を想像させるもの』である。
キャラは不死の身体、キャラクターは死すべき身体という社会的性格をもっており、前者はポスト・モダン的であり、後者はモダン的である。
といった意味合いになります。ポストモダンとかモダンは、全く勉強したことがなくて、よくわからないので触れません。
私は「身体」の表現について注目しています。特に血を流すかどうか、身体の損傷が描かれるかどうかという点です。『聖☆高校生』では、まあ大概の怪我は描かれていますよね。打撲、破瓜、骨折、脱臼、裂傷、などなど。人も死にます。「年を取る」という点では『あずまんが大王』や『らき☆すた』の登場人物も止まっていませんが、これらは『聖☆高校生』と比べると「キャラ」寄りだと思います。『聖☆高校生』と違って、擦り剥いたり鼻血が出たりする程度です。また、よくあるギャグ4コママンガは言わずもがなですね。爆発に巻き込まれようが、ハンマーで叩かれようが、次のコマではケロッとしています。これはリアリスティックな「身体」ではないでしょう。それに『聖☆高校生』のキャラの方がその人の人生や生活が強烈に想起されるという点も、伊藤さんの定義によれば「キャラ」よりも「キャラクター」よりであると私が考える基点となっています。
長々と書きましたが、要するに「なぜ『4コママンガ』で『キャラクター』を描くことにしたのか? そしてそれによって伝えたかったストーリー・メッセージ、作り上げたかった作品とは何だったのか?」ということです。読んだことがないのに言及するのは無責任ですが、例えば『シティハンター』ではギャグパートとシリアスパートが共存していたようですね。ギャグとシリアスを共存させた、マンガにそれほど詳しくない自分で知っているほど有名な(4コママンガではないという意味での)ストーリーマンガの前例があったのに、なぜギャグマンガでよく使われる4コママンガというスタイルを選択したのか? ストーリーマンガという手法も、使えないことはなかったのではないでしょうか。どこか、4コママンガという表現手法に挑戦しているような感想を持ちました。ここから新しいマンガのスタンダードが生まれるのかもしれません。気になります。案外「試してみたかっただけ」とか「そっちの方が描きやすかった」とかだったりするかもしれませんね。いずれにしても、この問いとその答えによって私にとっての『聖☆高校生』という作品の価値が変わるわけではありませんが。
もっと4コママンガも読まないとなぁ、と思いました。
- 最後に
書いても書いても、その瞬間から散らかっていく記事でした。まとめられない。
私は遅筆なので、この記事に合計で7〜8時間くらいは懸けたんじゃなかろうか。テスト期間中に書くのがまた、たまらなく愉しい(笑) 毎日長文で日記を書いている人はすごいですね。
まあ『聖☆高校生』は「とりあえず読め」って作品ですね。
不勉強や勘違いで間違ったことを言っているかもしれません。ご忠告、ご意見などありましたら、ぜひ教えて下さい。
*1:擬音がよく口から出るのって関西人でしたっけ? だとすれば今ほど自分が関西人だと感じた瞬間はないです(笑)
*2:読む前の自分はそれくらいビビってました(笑)
*3:むかしむかし、某エ○ァンゲリオンの日向マコトがTV版26話の体で「気持ち悪い」と言われ続けるMAD動画がありました(今もあるのかな?) 関西圏以外の方は、その中のトウジの発音で読んで下さればニュアンスが伝わるかと。「キ」にアクセントを置く感じで。
*4:私が勝手に名付けました。
*5:自然と“さん”付けになってしまった……。
*6:チカさんも自然と“さん”づけ……Sっ気のある女性には弱いのかもしれない。
*7:こういう無理解や隔意が、無自覚・自覚の悪意になっていくのかな……かと言って、半端に思いやっても何もできない。今の自分は、とことん無視するか、とことんコミットするしかないと考えています。
*8:記憶がおぼろげです。間違っていたら教えて下さい。